H26/5/17 の産経新聞によると大学就職率は3年連続で改善し、今春卒業した4月1日時点の就職率は94.4%だったそうです。

ただ、リーマンショック前の就職率よりは2.5ポイント及ばず、推定で2万3000人の就職が決まっていないとのことです。

しかし、新聞ではこう続きます。景気回復で就職率は上昇傾向だが、せっかく見つけた働き口がいわゆるブラック企業で、過酷な労働を強いられ、うつ病に苦しむ若者が少なくないと。

このような例が。24歳の女性は大学卒業後就職した会社を3か月で退職。昨年12月に民間の職業紹介会社を通じて再び東京都内のIT企業に就職。紹介会社からは仕事は事務と聞いていたが、会社には事務は募集していないのでシステムエンジニアをして欲しいと言われ入社1か月前に無給で長時間の研修をさせられた。研修が終わる頃に労働条件通知書を渡され基本給は18万円で200時間未満まではみなし残業とするという過酷な条件だったとか。女性は疲れ果てていて内容をよく読んでいなかったと。

そして働き始めると、新人では到底こなせないような高度な仕事をさせられ、長時間労働に加え上司から叱られ続けた女性は体調を崩し、今年の1月から休職しているとか。

体調を崩して休業している女性は確かに気の毒なのですが、この記事を読んでいてあれ?と不思議な事がいくつか。

先ず、この女性が初めの会社を辞めた理由は?はじめの会社ブラック企業云々と書かれていないところがら想像すると仕事のミスマッチか何かで女性の都合で会社を早期に退職してしまった可能性もありますよね?

次に紹介会社が中に入っての再就職となっていますが、紹介会社が仕事を紹介する時に「仕事の内容」を偽ったり、給与などの条件を伝えなかったのでしょうか?

会社が偽ったのか、紹介会社が共謀して偽ったのか?それとも労働条件がわからないのに、女性は職を決めたのでしょうか?

会社の労働条件の偽りはあってはけけないでしょうし、紹介会社が故意や重大な過失があって偽りを放置していたら大きな問題です。会社が偽ったのか、紹介会社が偽ったのか、女性が気にしなかったのか、この報道だけでは判断できません。

3つ目は1か月間無給の研修をどう伝えていたかです。この研修が業務に必ず必要なものであり、就職する時には義務付けられている場合は使用者(会社)の支配下にあるわけですし、給与の支給は必要となるでしょう。

本来はこの研修の初日が就職日であり、この期間に給与が支払われていないのであれば、賃金未払いになるのでは?会社も女性もこの認識がないのでは?勿論、この場合、就職したい女性の気持ちを利用した会社の許されざる行為となるでしょう。

4つ目が研修が終わる頃に労働条件を示され基本給が18万円で200時間まではみなし残業とする過酷な労働条件が書かれていた件。紹介会社が入っているのに労働条件が明確でないのが気になります。

募集時と就職時に労働条件の変更があっても労使(会社と労働者)が合意していれば法的には問題はないのですが、報道で読んでいる限りは先に労働条件の通知があったととは読めません。さてどうなっているのでしょうか?

最後に、200時間まではみなし残業という過酷な労働条件。これも気になりますね。一般的に労働基準法では週40時間が法定の労働時間です。月に換算すると168~177時間程度でしょうか。(1年の平均では173時間程度)すると、法定外労働=残業時間は月に27時間程度です。

業種にもよりますが、小規模企業であれば月に30時間程度の残業は日常茶飯事です。これを過酷な労働条件と言うのはいささか大げさな気もします。

勿論、200時間の残業であれば過酷ですが、18万円の基本給に200時間の残業は最低賃金法の関係からも含めることはできません。

すなわちこの報道ではブラックい企業に気の存在を喚起しているのでしょうが、労働条件を通知していなかったり、無給の研修をしたり、後に労働条件を変えたとなれば会社や紹介会社の責任ですし、何も考えないで前職を辞めてちゃんと考えずに次の仕事に就いたとなれば女性の過失も少ないと言えどもあります。

そして、今の多くの中小企業、小規模企業にとっては30時間の残業が過酷と書く新聞も不安を煽りすぎているのではと言うのが正直な感想です。

どうであればブラック企業と言えるのか。会社も紹介会社も新聞社もそして就職する人ももう少し法的な理解をすべきではないでしょうか。