前回では、労働契約法の改正ポイントをクローズアップしましたが、今回はこの「労働契約法」自体を取り上げてみましょう。

労働契約法…条文を見てみますと、難しい文は少なく且つ条文も僅か20条程度です。

なぜ、労働基準法と切り分けてこの「労働契約法」を成立させたのでしょうか?

 

答えは…法体系が違うからです。

少し学術的な話になりますが、労働基準法(以下、労基法)は刑事法なのです。つまり、労基法違反は犯罪です。

一方、労働契約法は民事法です。つまり、労働契約法を違反してもなんら罰はありません。

つまり、民事上の約束事を再認識させようとした意図があり、労働契約法は成立したのです。

そうしたことを理解すると、「解雇」の定めが労基法から労働契約法に移項した理由が分かります。

具体的に言えば、「解雇」に関して労働基準監督署が司法警察権を行使するのは

  • 解雇予告手当を支払ってない/解雇予告をしていない
  • 解雇制限中に解雇をした

などの場合です。

「不当解雇だから、労働基準監督署に申告してやる!!」とよく耳にしますが、大体のケースでは解雇予告をした上での解雇ですので労働基準監督署が立ち入るには限界があります。裁判を起こさない限りその解雇は有効でもあり・無効でもあるグレーな状態のままです。

そういった不当解雇に関する裁判の判決の積み重ね(「不当解雇により解雇無効」の判決が大多数)が労働契約法の礎となったのです。

労働契約法の16条には「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めており、非常に曖昧な表現です。曖昧な表現だからこそ、「解雇」という処分はしっかりとした根拠がない限りは無効になってしまうのです。

ですので、解雇の判断は慎重に…