6月に入りまして、労働保険料の申告納付の時期がやってまいりました。
さて、「労働保険料」とは原則として労災保険料と雇用保険料です。(確定保険料の場合には、一般拠出金が加算されます)
保険料の計算方法は、事業主が労働の対価として「労働者」に対して支払うものすべてに保険料率を掛けて、保険料を計算します。
当該、「労働者」とは具体的に誰を指すのでしょうか。 考察してみたいと思います。
まず、労働法の基本である「労働基準法」を確認してみましょう。
●第9条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
では次に労働三法の一つ「労働組合法」を確認してみたいと思います。
●第3条 職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準じる収入によって生活する者をいう。
上記2つの定義を比べると、「使用される」という文言の有無に違いがあると分かります。つまり、労働基準法での定義ですと指揮命令を受け、労働の対価として賃金を受ける者を対象としており、請負で働く人を適用の対象外としてます。一方で労働組合法での定義だと指揮命令の関係は必要としておらず、労働の対価による収入により生活するものを対象としてます。ですので、請負で働く人は労働組合法では「労働者」と定義できます。
個人的見解としましては、日本国憲法28条では「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」と規定しており、上記「団結権・団体交渉権・団体行動権」を保障するために、労働組合法での労働者の定義をより緩やかに定義していると考えます。
次に、「労災保険法」の定義を見てみたいと思います。
労災保険法には、具体的な労働者の定義はありませんでした。ですが、よく考えてみると労災保険法は労働基準法から派生した法律ですので、労働基準法の「労働者」と同義であると考えて問題ないでしょう。ですので、労働組合法では対象となるが、労働基準法では対象とはならない「労働者」を保護するため「特別加入制度」があります。
最後に「雇用保険法」の労働者の定義を確認してみます。
雇用保険法では、「労働者」の定義はありませんでした。こちらも、よく考えてみると雇用保険法は「失業者を保護する」のが主たる目的ですので、定義としては「被保険者」というカテゴライズになっております。当該「被保険者」の定義を確認しますと・・・週20時間以上の勤務で、且つ31日以上の雇用見込みである、65歳以上でないものや昼間学生でないものと定義されています。主たる目的から考えても失業というある意味必然の事故に応対する保険である(つまり、年金受給者である高齢者や労働ではなく学問が本分である学生を対象外としている)ということが分かります。
まとめとしまして、上記4つの法律 ●労働基準法 ●労働組合法 ●労災保険法 ●雇用保険法 での労働者の定義の広さを表すと
労働組合法>>労働基準法≒労災保険法>>>>>>>雇用保険法となるでしょう。 雇用保険法の定義が一番の狭義となりますが、日本国における労働者の大多数が雇用保険法の対象となります。