割増賃金に関するトラブルは、労働紛争の定番です。さて、今回はタイトルの「定額残業代」に関する最近の傾向を考察してみます。
ワークフロンティア事件(平24/9/4)では、就業規則に「基本給に時間外労働45時間分の固定割増賃金~~円を含む。」と規定していました。ある時、残業に関して争訟がおきました。争訟の当事者である原告従業員は就労していないので、会社はノーワークノーペイの原則に基づき、固定割増賃金部分を減額控除していました。これに対して、裁判所は待ったをかけました。
「固定割増賃金の合理的意思解釈として、実際の時間外労働に基づく割増賃金の額が、固定割増賃金の額に満たない場合であっても、基本給は満額支払われるものであるから、固定割増賃金部分を不支給とすることは許されない」と判示しました。つまり、会社は残業してない者に対してでも、残業手当を払わなければならないということです。
他にも最近ですと、就労の実態に応じて支払うべき残業代(割増賃金)をあまりに過大に「残業手当」として処理している場合に(例えば、月の基本給15万で、固定残業手当を10万など)、毎月の法定時間外労働の変動にかかわらず一律で固定的に処理していますと、残業手当が法定時間外割増賃金とは認められず、基本給と一体をなすものと判断される判例があります。つまり、月の基本給15万で、固定残業手当を10万としていて、毎月の時間外労働などを集計せず、未払い残業問題が生じた場合に・・・・
基本給15万を月の所定労働時間173時間で除して、1.25倍にしたものが時間外割増賃金の1時間単価 とはならず、
基本給15万と固定残業手当10万の合計額を月の所定労働時間173時間で除して、1.25倍にしたものが時間外割増賃金の1時間単価となります。
もし、1ヶ月100時間分の未払い残業代問題が生じたら
【誤った計算方法】 150,000÷173時間×1.25=1,083.81 1,083.81×100時間=10万8381円
10万を残業として払っているので、10万8381円-10万=8381円 よって8381円が未払い
ではなく
【正しい計算方法】 (150,000+100,000)÷173時間×1.25=1,806.35
1.806.35×100時間=18万635円
18万635円がそのまま未払い額となります。
少し前ですと、固定残業代で処理するのが主流でしたが、現在のこういった判例を鑑みると時間に応じて割増賃金を支払うのがこれからのスタンダードになりそうですね。