政府は労働者派遣法改正案を来年の通常国会に提出。平成27年春から新制度に移行させたい考え。

厚生労働省は、届け出制で開業できる特定派遣事業を廃止し、すべての派遣会社を許可制の一般派遣事業に移行させる方針を固めました。

「常時雇用」を前提としているはずの特定派遣事業で、有期雇用契約の繰り返しが横行するなど、派遣労働者の立場がかえって不安定になっているとの指摘があるため。一般派遣事業の許可要件には2千万円以上の資産規模や派遣元責任者講習の受講義務などがあり、事業参入のハードルが高いので、業者の「質」を高める狙いもあると思われます。

派遣法で定める特定派遣事業は本来、派遣会社に「常時雇用」される労働者が対象です。雇用が比較的安定しているとの考え方から規制がゆるやかで、即日受理される届け出制となっています。IT企業や製造業など技術者の派遣を主とする業者が大部分を占めています。

しかし「常時雇用」に法律の定義はないのです。

米リーマン・ショック後の不況で技術者の需要が減ったこともあり、1年ごとの有期雇用を繰り返したり、悪質なものでは仕事のない時期に、労働基準法で定める休業補償もなかったりと、実質的には雇用が不安定な派遣会社も少なくないようです。特定派遣事業の廃止で、すべての派遣会社は一般派遣事業の許可を取る必要があるでしょう。

一定の事業規模が求められるほか、5年ごとの更新が必要となり、業者の信用向上にもつながることが期待されますが派遣業の本来の目的を失うのではないかと危惧します。元々、派遣はごく限られた職種でのみ許されていたもので、施行当初は13業務のみで、その後の法改正で26業務、その後に禁止業務だけが列挙されて原則は派遣可能となりました。

特定派遣事業自体を廃止するよりも、上記の労働基準法違反の場合には基準法違反で検挙すべきですし、期間の定めのある雇用契約の場合には一般派遣として規制をすべきです。ちゃんと特定派遣を行い、事業をおこなっている会社からすると「派遣の許可」をとることは負担にしかならないでしょう。

本来であれば、悪質な派遣会社は働き手がいなくなるか質の低い労働者しか派遣できないことにより自然淘汰されるのが摂理なのでしょうけど、不景気が自浄作用を鈍らせているのでしょう・・・