2014年11月14日に第8次社会保険労務士法改正案が、先の参議院に続き可決されました。
- 個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続における紛争の目的の価額の上限の引上げ
- 厚生労働大臣が指定する団体が行う個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続において、特定社会保険労務士が単独で紛争の当事者を代理することができる紛争の目的の価額の上限を、120万円(※現行は少額訴訟の上限額(60万円))に引き上げること。(第2条第1項関係)
- 補佐人制度の創設
- 社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができることとすること。(第2条の2関係)
- 社会保険労務士法人が1の事務の委託を受けることができることについて規定すること。(第25条の9の2関係)
- 社員が一人の社会保険労務士法人
- 社員が一人の社会保険労務士法人の設立等を可能とすること。(第25条の6等関係)
1については各都道府県社労士会が行っている「労働紛争解決センター」でのあっせん代理に関するものです。特定社労士が単独で代理できる紛争の目的額の上限が60万円から120万円へと引き上げられました。当初は撤廃をとの全社連(全国社会保険労務士会連合会)では要望していましたが、結局120万円で落ち着いたようです。せめて160万円にはなって欲しかったのですが。解雇無効確認、従業員の地位確認、雇用関係存続確認などの訴額は160万円とされるからです。
社労士総研 研究プロジェクト報告書「労働ADR実践マニュアル」(平成24年)によると、労働基準法等に違反する事項を含む案件も、民事上の個別労働紛争として和解できるものは、あっせんの対象とすることが出来ると解するのが相当としています。
労働局紛争調整委員会によるあっせんの場合、労働基準法違反がある場合は基本的には労働基準監督署への申告が先になりますが、労働紛争解決センターの場合は上のように扱われるのであれば一元的に話し合いで解決を図る事ができます。その上限額が上がった事は評価できる事であると言えます。
2については労災保険に関する審査請求、再審査請求を行ったが解決出来ず行政訴訟となった場合、今までは弁護士に全てを依頼しなければならなかったものが、弁護士に依頼し且つ補佐人として出廷し陳述権が得られたので引き続き依頼者の問題解決に尽力出来ることになります。
また、労働局紛争調整委員会や労働紛争解決センターでのあっせんが不調に終わった場合に、労働審判や裁判に移った時も同様です。
全社連では簡易裁判での訴訟代理も当初は求めていました。しかし私見ですが裁判は弁護士(一部は認定司法書士)に任せるべきでしょう。ただ司法によるADRである個別労働紛争に係る民事調停代理、及び労働審判(審判に意義が出て裁判になった時を除く)の代理が出来るようになるとありがたいですね。
勿論、その前に今与えられている権限を十分に発揮して、行政型(労働局紛争調整委員会のあっせん)、民間型(労働紛争解決センターのあっせん)ADRの代理や今回与えられる事になった補佐人としての職を十分に発揮してからですが。与えられた権限を十分に使わず、次の権限と言ってもそう簡単には認められないでしょう。
3の1人法人は共同で法人を設立したがその後共同者が抜けた場合には良い改正と言えます。しかし、私見ではありますが当初から1人の社労士法人が設立出来るのは如何なものでしょうか?見かけは法人だけど、中身は個人事務所である社労士法人のメリットがよく理解できません。
他の士業では1人法人が設立出来るように法改正が進んでいない中で社労士は先行して可能になった事は評価すべきなのでしょうが、複雑な思いです。